合成ダイヤモンドとは?エシカルファッションとアクセサリーについて

はじめに

「エシカル」「エシカル消費」といった言葉は、近年生活の中でなじみのある言葉になってきているのではないでしょうか。しかし、何となく意味はわかるけど、正直しっかりとその意味がわからない。そして、「本当に大切なことならわかりやすく日本語で言ってくれよ!!」と思ったりしますよね。
「エシカル」という概念がファッションにおいて、どのように溶け込んでいるのか、また「エシカルファッションとアクセサリー」について書いていきたいと思います!

エシカル消費の流れ

エシカル(ethical)とは、「倫理的な」という意味の単語です。エシカル消費というのは倫理的な消費のこと。今の社会において、倫理的な消費というものが世界的に求められています。
つまりは、地球環境、地域社会、労働問題等にしっかり目を向け、人として守るべき道理に従った(エシカルな)消費を心掛けることが推奨されています。
2015年9月ニューヨーク国連本部において開催された「国連持続可能な開発サミット」で「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、持続可能な開発目標(SDGs)という持続可能でよりよい世界を目指す国際目標が示されました。

企業や個人が2030年までに上の17つのロゴで記された目標を目指し取り組むことで持続可能な社会の実現に近づきます。

エシカルファッション


現在、ファッション業界において「エシカルファッション」という概念は広く浸透してきています。今や、ファッションにストーリーを求める時代に入ってきています。

例えば、Tシャツ一枚を選ぶのに、それをいつどこで誰がどのように作ったのか、生産されている環境はどのようなものかを考える人が増えてきたのではないでしょうか。

ファッションアイテムをストーリーごと身にまとうという考え方が増えてきたように思います。

こういった流れが始まったきっかけとして「ラナプラザ崩壊事件」の存在は大きいでしょう。
2013年4月24日にバングラデシュのシャバールで、8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」が崩落しました。死者1,127人、行方不明者約500人、負傷者2,500人以上が出たこの事故は、ファッション史上最悪の事故とも呼ばれています。
ラナプラザには27のファッションブランドの縫製工場が入っており、この事故によって多くの工場従事者の方々が亡くなりました。グローバル展開しているファッションブランドが、労働者を低賃金かつ劣悪な環境で働かせていた事実が浮き彫りになり、世界に大きな衝撃を与えました。

2015年には、ラナプラザ崩壊事件は「ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~」という映画でも取り上げられ、本作ではファッション業界の裏側に潜む闇が暴かれ、エシカルな消費の重要性が提起されました。

こういった衝撃的な事件の発生から、ファッション業界ではエシカル消費のおおきな流れが始まりました。
実際に原料にオーガニックコットンを使用した製品を作っているブランドやフェアトレードに基づいた生産を行っているブランドも多く出てきました。

また、世界的にもエシカル消費を訴えかける画期的な企画がなされています。

 

【参考記事】This Vending Machine Sold T-Shirts For Only 2 Euros, But Nobody Wanted To Buy Them

この動画は、ドイツのNPO法人Fashion Revolutionが2015年に行った社会実験の様子です。

ドイツのベルリンの街角に2ユーロでTシャツを買える自販機を設置し、購入しようとした人たちに対し、購入前にTシャツ製造現場の劣悪な環境を映した動画が流れます。そして、最後には「購入」するか「寄付」するかを選ぶことができます。

エシカル消費を啓発する企画として非常に面白いものであると思います。

こういった取り組みからもわかる通り、私たちが普段身に着けているものが、裏ではどのような環境で作られているのかを考えることは、今ファッションを楽しむうえで重要なことになってきています。

アクセサリーとエシカル―紛争ダイヤモンド―


さて、アクセサリー業界で「エシカル」を考えるとき、世界ではどのような問題が起きているのでしょうか。今回は、アクセサリーとの結びつきが非常に高い宝石ダイヤモンドに目を向けてみましょう。

その美しさや希少性から高い価値を持つダイヤモンドですが、その経済的価値の高さから、多くのかけがえのない命が奪われてしまったことをご存じでしょうか。

ダイヤモンドの美しさの裏に潜む闇のストーリーをご説明しましょう。

日本からは遠く離れた西アフリカの国シエラレオネ、ここでは1991年から2002年まで10年間にわたって反政府勢力RUFと政府の間で激しい内戦が繰り広げられていました。

RUFは子供を誘拐し少年兵・少女兵として強制徴兵したり、性的虐待を行っていました。また、村を襲撃し罪のない市民たちを捉え、見せしめとして腕や脚を切り落としたりなどの暴虐を繰り返しました。そして、この内戦によって7万5000人もの人々が亡くなり、200万 人以上の難民が出てしまう凄惨な状況となりました。

内戦においてこのような悲惨な状況をもたらした原因の一つが天然ダイヤモンドでした

反政府組織は、村々を制圧し強制労働させ採取したダイヤモンドを密輸し、武器調達の資金にしていました。
ちなみに、このダイヤモンドをめぐる紛争は「ブラッド・ダイヤモンド」という映画で取り上げられていて、ストーリー自体はフィクションですが内戦の悲惨な状況をリアルに描いた映画になっています。ここで主演を務めたレオナルド・ディカプリオは合成ダイヤモンドを製造しているダイヤモンドファウンドリー社に投資をされています。

こういった内戦の影響を受け、キンバリープロセスという国際的な取り決めが定められました。
キンバリープロセスはダイヤモンド原石が紛争の資金源になることを予防するために、原石輸出時に紛争との無関与性の証明を義務づける制度です。

しかし、このキンバリープロセスも制度として拘束力が弱くいくつかの問題点があるといわれています。

1.紛争ダイヤモンドの採掘と流通だけに限定

キンバリープロセスが規制している範囲は狭く、対象が紛争ダイヤモンドの採掘と流通だけに限られていて、劣悪な労働環境、児童労働や不当な賃金といった、労働者搾取に関する問題に対しては規制が行き届いていません。

2.原石だけに限定

キンバリープロセスは、カットされて輸出される前のダイヤモンド原石にのみ適用されます。そのため、基本的に原石から加工された時点で追跡は終了となります。

3.反政府軍による活動に限定

例えば、政府軍がダイヤモンドを資金源とし紛争や人権抑圧を行っても、紛争ダイヤモンドとは認められません。 実際にジンバブエでは国有軍が制圧している鉱山で子どもを含む地元住民に強制労働を強いたり、拷問・暴力・殺人等を行っていましたが、こういった場合は紛争ダイヤモンドとして認定されません。

 

このように、キンバリープロセスは問題が山積みであり、この規定では確実にクリーンな天然ダイヤモンドであることを保証することはできません。

天然ダイヤモンドが抱える「紛争ダイヤモンド問題」はキンバリープロセスの制定によって、軽減されたもののいまだ解決に至っていないと言えるでしょう。

アクセサリーとエシカル―環境被害―

天然ダイヤモンドが抱える問題として、人権問題以外にも環境問題があります。ダイヤモンドの採掘の過程で地球に対してダメージを与えてしまっていると言われています。

天然ダイヤの採掘方法は主に3つあります。

  1. パイプ鉱山での採掘
  2. 漂砂鉱床での採掘
  3. パンニングまたはウォッシング

現在、これら3つの採掘方法のうち、1,2の鉱山を開発し採掘する方法が主流です。

鉱山開発はもともとある自然を破壊切り崩し生態系を破壊してしまうことに加え、多くの水を使うため、自然環境に悪い影響を与えています。

合成ダイヤモンドとは

ここまでで書かせていただいたダイヤモンドの裏に潜む重大な問題点。
これを解決する一つの手段として合成ダイヤモンドが注目を集めています。
合成ダイヤモンドとは科学の力を用いて、人工的に作られたダイヤモンドです。

元々、天然のダイヤモンドは地中の奥深く、マントルにおいて超高圧の環境下で長い時間をかけて生成されるもので、今まで人間の手では作り出すことは不可能とされてきました。
しかし、科学技術の発展により、人工的にダイヤモンドを作り出すことができるようになりました。その精度はすさまじく、肉眼では判別がつかないほどです。

合成ダイヤモンドの製法は主に二つ。高温高圧法と化学気相蒸着法の2種類です。実際に天然ダイヤモンドが生成される地中のマントルの環境を科学の力で再現し、ダイヤモンドを作るのが高温高圧法。炭素を含んだメタンガスに化学反応を起こさせ、炭素原子を結晶化して作るのが化学気相蒸着法。どちらも天然ダイヤモンドのように莫大な採掘コストはかからないため、価格を抑えることができます。

そして、化学成分/結晶構造/光学的特性/物理的特性が天然ダイヤモンドと同じであるため、合成も天然も同じダイヤモンドといえるでしょう。

「合成ダイヤモンド」と聞くと「偽物のダイヤモンド」という印象を持たれる方も多いと思います。しかし、天然ダイヤと合成ダイヤは生成された過程が異なるだけで、同じダイヤモンドなのです。

例えると、天然ダイヤモンドと合成ダイヤモンドの関係は蟹とカニカマの関係ではなく、天然蟹と養殖蟹の関係です。

わかりにくかったでしょうか...

とにかく、天然ダイヤモンドにかわる宝石として合成ダイヤモンドは注目を集めています。

合成ダイヤモンドと天然ダイヤモンドを比較

では、実際に合成ダイヤモンドと天然ダイヤモンドはどう違うのでしょうか。
わかりやすく説明するために下のような表をご用意いたしました!

 

合成ダイヤモンド

天然ダイヤモンド

成分

炭素

炭素

硬度(モース)

10

10

屈折率

2.417

2.417

分散度

0.044

0.044

紛争問題

無関係

紛争の資金になる可能性(シエラレオネ内戦)

環境への影響

少ない

(電力の消費)

多い

(鉱山開発による生態系の破壊、多量の水の消費、二酸化炭素の排出)

生成期間

2週間

100万年から数10億年

価格(1ct)

10万円

100万円

供給安定性

安定

不安定

まず、宝石の性質を表す要因である成分、硬度、屈折率、分散率はどちらも同じであり、天然ダイヤモンドと合成ダイヤモンドは鉱物的に性質は同じであるといえます。
そして、紛争への関与がないことや、自然環境にも優しいことから、天然に比べ合成ダイヤの方が「エシカル」であると言えるのではないでしょうか。

しかし、一方で合成ダイヤモンドも万能ではないことも事実です。
合成ダイヤモンドは基本的には地球環境に影響を与えることがないとされていますが、作る際に多くの電力が必要となりますので間接的に多少の環境への影響はあります。

ここで考えるべきことは、実際のところ世の中には100%エシカルなものなんてないということでしょう。私たちがエシカルな消費を心掛けるとき、大切なことは「今ある選択肢の中から最善を選択する」ことであると思います。

アウトドアアパレルブランド、パタゴニアの創業者であるイヴォン・シュイナードはエシカル生産の第一人者です。
彼は言います。

「『サステナビリティ』なんてものは存在しない。私たちにできる一番のことは、与える害を最小限にすることだ」

【参考記事】パタゴニア創業者イヴォン・シュイナード「サステナビリティなんてものはない」

と。

今ある選択肢の中から、社会や自然環境に対して与える被害が少ないものを選び取ることが実際に私たちができることでしょう。

合成ダイヤモンドを使ったネックレス―プチモダン―

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こういった流れからを受け、LION HEARTは合成ダイヤモンドを使用したネックレスを制作しました。
今の時代、「エシカル」というものに目を向けることはとても重要なことです。そして何より、取り組むということが大切です。

合成ダイヤモンドを使ったLION HEARTのネックレスコレクション「プチモダン-Petite Modern-」。是非、チェックしてみてください。

 

 

 

文:佐々木大輔 LION HEART

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